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第15回 坂本正人さん(気仙沼復興商店街 副理事長)

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復興対談シリーズ ~Talk for Recovery~

(第15回)

気仙沼復興商店街
副理事長
坂本 正人 さん

※2013年12月末、古森が恒例にしている
年末の三陸ご挨拶訪問期間中に、対談の
お時間をいただきました

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1. 復興商店街3年目を迎えて
2. 原点はコロッケと下着の青空市
3. 過去2年間の変化
4. 本当の修羅場はこれから
5. もう一度あの町を
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1. 復興商店街3年目を迎えて

古森:おはようございます。年末のお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。これまで何度かお会いしていながら、しっかりお話を伺う機会がなかなかありませんでした。この機会を楽しみにしておりました。今日は、よろしくお願いいたします。

坂本:いえいえ、お越しいただきありがとうございます。

古森:気仙沼復興商店街「南町紫市場」、2011年の年末にオープンしてから満2年を超えましたね。私が初めてこちらに伺ったのは、そのオープンの直後でした。

坂本:そうでしたか・・・。オープンは、12月24日でした。

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古森:クリスマスイヴのオープンということで、注目されましたね。私はその時も一人旅で、寒い日でした。こちらの商店街で食べた暖かい食べ物が、心にしみたのを今でも覚えています。しかし、2年間たつのは速いですね。

坂本:そうですね。当初は立ち上がれるかどうかも分からなかった状況から、本当に数多くの皆さまから物心両面でのご支援をいただきまして、何とか軌道に乗ってきたというところですね。

古森:この商店街のことは、これまで色々なメディアで報じられてきました。しかし、まもなく震災3周年になり、世の中の東北被災地に対する関心も時とともに薄れて行くものと思います。あらためて、震災当初から商店街立ち上げの頃のことを振り返ってお聞かせいただいた上で、今とこれからの課題をお伺いできればと思います。

 

2. 原点はコロッケと下着の青空市

古森:商店街がオープンして満2年ですが、計画そのものは、もっと早い段階から存在したのでしたね。

坂本:はい。計画自体は、震災直後の5月にはもう起案していました。当初は同年9月のオープンを目指していたのです。しかし、さまざまな課題に直面しまして、年内のオープンも危ぶまれる状況に陥りました。そうした中で、日本中の、そして海外の方々からもさまざまなご支援をいただきました。建築業者さんにも文字通り徹夜で頑張っていただいて、なんとか年内のオープンにこぎつけたのが2年前です。

古森:復興商店街の皆さんは、もともとこの地域で商売をしておられた方々なのですよね。

坂本:そうです。震災以前は、このあたりに7つの商店街があって、およそ160の店舗がありました。そのうち9割以上が津波に流されてしまいました。その中から、当初は51の店舗が集まってスタートして、その後3店舗増えて54店舗になりました。

古森:そもそも、復興商店街をやろうというきっかけは、どのようなものだったのですか。起案が5月ということは、さらに早い段階で動きがあったわけですよね。

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坂本:そういうことになります。震災発生当初は、この地域の住民は近くの紫神社に避難していたんです。この辺りは瓦礫に覆われていて歩くこともできない状態でしたが、しばらくして道が通れるようになってきた頃、隣町に行ってみたのです。すると、もう路上で商売が始まっていたんですよ。

古森:路上で・・・。

坂本:はい。それを見て、ひらめいたというか、思いを新たにしたというか。震災当初1カ月くらいは、多くの仲間が「商売をやめる」「ここを出て行く」などと言っていました。この場所では、もう商売はできないという考えの人が多かったのです。しかし、隣町の路上での商売再会を見て、私は大いに刺激を受けました。

古森:まずは、自分でやり始めようと。

坂本:はい。幸い、私のところは、店は流されましたがコロッケの移動販売車は残っていましたので、それで岩手までコロッケを仕入れに行きました。そして、東京の方から下着を仕入れまして、青空市を始めたのです。

古森:コロッケと下着を青空市で。まさに食べるものと着るもの・・・ですね。

坂本:青空市は、そのような感じで最初は2軒から始まりましたが、すぐに仲間が増えました。多い時には10軒くらいが出るようになりました。心の中では「またここでやりたい」と思っていて、何かのきっかけを探している仲間がいたのですね。しかし、青空市ですから、雨が降るとお店を休みにしなければなりません。それで、はやり建物が必要だということになりまして。

古森:その流れが、復興商店街の構想になっていくわけですね。

坂本:はい。皆で建物を探しているうちに、中小企業基盤整備機構の支援制度を見つけて、申請したのが5月です。中小企業基盤整備機構の「仮設施設整備事業」です。気仙沼市が土地を借り上げて、中小企業基盤整備機構が仮設の建物を建設するというスキームでした。私たちの方も、「NPO法人気仙沼復興商店街」という形で、正式に組織化したわけです。

古森:そこから、官と民、企業・団体と個人、国内と海外など本当に多岐にわたる応援団の方々と協働されて、なんとか2011年内のオープンへと向かっていくわけですね・・・。当時、メディアでも報じられていましたが、応援に関わっていた人からの口コミでこの商店街にたどり着いた人も多かったようです。実は私もその一人でして、当時親しくさせていただいていた非営利団体のメンバーの方から「行ってみて」と言われて、立ち寄ったのでした。

坂本: そうした一つひとつのつながりの中で、たくさんの方々に来ていただいています。本当にありがたいことです。

 

3. 過去2年間の変化

古森:さて、そうした立ち上げ期を経て、実際にオープンしてからこれまでの経過は、どのような感じでしょうか。細かいことではなく、坂本さんとして過去2年を俯瞰した場合に感じられることは。

坂本:そうですね・・・。初年度の滑り出しは、思った以上に好調でした。復興商店街の設立に関わった方々やそのまわりの方々からの継続的な応援も大きかったですし、被災地視察ツアーのバスがたくさん来て下さいました。私たちも積極的にそれを求めて動きましたし、世間の関心も高かったと思います。

古森:たしかに、ここに来るといつもバスが1~2台停まっていました。交通整理をする坂本さんのお姿もよく見かけました。

坂本:地元のニーズも、それなりにありました。仮設住宅からわざわざ買い物に来て下さる方もいらっしゃいましたし、震災前からのお得意さんもありました。運営側としては、初年度はとにかく「前だけ見ていた」という感じでしたね。

古森:2年目に入ると、何か状況は変わりましたか。

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坂本:変わりましたね・・・。まず、被災地視察ツアーのバスの数は減ってきました。依然として来て頂いていますが、やはり、減ってきました。

古森:時間とともに人々の記憶が薄れて行くという面もあるでしょうし、被災地全域で震災モニュメント的なものが片付けられていった流れとも関係しているのでしょうか。

坂本:一方で、増えたものもあります。2年目になると、中高生の修学旅行のバスが増えてきました。北海道や東海地方を中心に、全国から来て頂いています。

古森:なるほど、修学旅行ですか。どういう経路で、修学旅行の行き先として選ばれていくのでしょうか。

坂本:初年度にここにお越しいただいた各地の先生方が、ご自身で感じたものを生徒さんたちにも伝えたいということで発案して下さるケースが多いですね。それと、ここはすぐ裏手が高台ですから、万が一再度津波が来ても逃げやすい構造です。先生方や親御さんとしても、安心材料が大きいという要素もプラスに働いているようです。

古森:たしかに、ここからなら数分以内に商店街中のお客さんが裏手の高台に登ることができますね。それは、大きな安心材料だと思います。

坂本:県内の中高生のスタディー・ツアーのようなものも増えています。震災初年度は躊躇していた方々も多かったようですが、やはり、これだけの学びの材料が目の前にあるわけですから。「子供たちに何かを感じ取ってほしい」と考える学校が増えているのだと思います。

古森:同じ県内にこれだけ大きな災害が起きていて、そこで負けずに頑張っている人々がいるわけですからね・・・。人生の青空教室のようなものですね。

坂本:それから、大学生のツアーも、かなりありますよ。一度来てくれた方々が、ご友人を連れて何度も来て下さっています。この世代は、数年の近い将来に何か新しい動きをもたらして下さる可能性を秘めた世代でもあり、実際、動きも出ています。地元の高校生と東京の大学生が協働して、新しい事業や街づくりのアイディアを議論するようなことも起きてきています。

古森:それは、復興商店街だけでなく気仙沼全体にとっても希望の持てる動きですね。

坂本:はい。そして、ずっと地道にそうした動きが起きるように、人の輪を広げたり、商店街の飾りつけをやったり、イベントを企画・実施したりして下さっているボランティアの方々がいらっしゃいます。本当にありがたいことです。

 

4.本当の修羅場はこれから

古森:さて、3年目に入った復興商店街ですが、今とこれからの課題はどのようなものでしょうか。

坂本:まあ、これまでの2年間に色々なチャレンジがありましたが、本当の修羅場はこれからだということですね。

古森:修羅場は、これから・・・。

坂本:あくまでも仮設商店街ですから、ここはいずれなくなるわけです。当面は期間を延長して操業することを決めていますが、移転は時間の問題なのです。その移転に耐えて、本設の商店街として普通に成り立っていけるかどうか。それが、この商店街が抱えている最も大きな課題ですね。

古森:何か具体的な動きは、あるのですか。

坂本:まず、とにかく行き先を探さなければなりません。近いうちに、この一帯はかさ上げ工事が始まります。一時的に別の場所に再度仮設で置いたうえで、本設移転先を探すということになります。

古森:それは、しびれますね・・・。

坂本:しかも、全部が一気にかさ上げされるわけではないようで、かさ上げ対象の棟に入っている店舗が一時移転先に移れば、今のような商店街としての集積はなくなってしまいます。しかし、皆が一緒に一時移転できるような場所もないわけです。ですので、今は本当に危機的状況で、移転先探しを必死に行っているところです。

古森:財政面では、大丈夫なのですか。

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坂本:もちろん、財政面のチャレンジもあります。ただし、ここから本設への移転に関しては、グループ補助金を申請しています。まとまって移転することを支援していただく形です。市の方も理解を示していただいていますし、今は県の認可待ちの状態です。2014年9月か12月あたりに認可がおりれば、そこから1~2年での移転・操業が可能となります。希望の糸がつながります。

古森:それが認可されたとして、そして、移転先が見つかったとして、今度は商売そのもののチャレンジがありますね。

坂本:おっしゃる通りです。本設に移転して、そこから自力で商売を軌道に乗せていくには相当な努力が必要です。現在の54店舗のすべてが、本設に移転後も商売を続けて行く意向をお持ちであるとは言えない状況です。再度資金調達をして、負債を抱えて頑張っていくというのは勇気のいることですし、時間もかかることですから。

古森:54店舗全部が一緒に移るというわけには、いかない可能性が高いわけですね。それでも、前に進んでいくしかないわけですね。

坂本:はい。やる以上は、きちんと商店街としての集積を確保しなければなりません。現在の54店舗に限定せず、移転後の商店街に入居して商売をしていく仲間を、並行して募っているところです。もろもろ入れると今から2年後くらいのスタートでしょうから、そのための種まきを始めています。

古森:まだまだ課題山積、むしろこれからが本番ということが良く分かりました。お話を伺っていて率直に思いますのは、以前からあるものを復旧しつつ、さらに復興へとつなげていくのは、単にゼロから新しいことを始めるよりも難しいのかもしれないな・・・ということです。大変なご苦労があることと思います。

 

5. もう一度あの町を

古森:最後に一つ個人的なことをお伺いしたいのですが・・・。なぜ、坂本さんはそこまでして、無償でこんな厳しい仕事に取り組んでおられるのでしょうか。

坂本:やはり、小さいころからここに住んでいますからね・・・。なんとかしてもう一度、この町が甦ればいいなと願っているのです。

古森:津波に流されても、やはりそう思われますか・・・。

坂本:震災後に、被災したエリアは夜真っ暗になりました。被災したエリアと難を逃れたエリアの境で、くっきりと明るさの違いができました。私の家は、運良くその境界に位置していて、津波の被害にはあいませんでした。しかし、震災からしばらくの間、「みんなと一緒にうちの家も流されたほうが良かったのではないか」という思いが消せませんでした。被災した仲間の多くが、「ここはもう終わりだ」「離れよう」と言っているのを聞きながら、いたたまれない日々を過ごしました。

古森:そんなことがあったのですね。

坂本:ですから、私は何とかしてもう一回、地域の皆さんの結束を取り戻したいのです。そのために、苦しくても動いてきましたし、これからも動き続けます。この商店街に入っていないお店でも、商店街が立ち上がったのをきっかけにして周辺に戻ってきてくれたりしていますから、動き続ければ必ず何かが変わっていくと信じています。

古森:その思いが、これからの本設移転の流れの中で形になっていくといいですね。一時移転先の問題など、喫緊の課題が解消していない中ではありますが・・・。最終的には、前向きな形で地域のコミュニティーが再生することをお祈りしております。

そろそろお時間になりました。坂本さん、本日はお忙しい中貴重なお話をお聞かせ下さり、ありがとうございました。

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(終)

 

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