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山村 友幸 さん (NEXt CHANGE co., ltd . CEO / Future Designer)

復興対談シリーズ ~Talk for Recovery~ (第9回)
NEXt CHANGE co., ltd . CEO / Future Designer
山村 友幸 さん

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1. 震災を機に飛び込んだ「環境未来都市構想」
2. 気仙地域に移り住んで
3. 地域経済のファンダメンタルズをつくりたい
4. 起業を促し、世界に開かれた町に
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1. 震災を機に飛び込んだ「環境未来都市構想」

古森:今日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。この対談シリーズは、東北の震災復興の現場で活動しておられる方々のお話を伺って、日本や世界に情報発信していこうという取り組みです。こちらに住民票を移して、本腰を入れて活動しておられる山村さんのお話を、是非伺いたいと思っておりました。どうぞよろしくお願いいたします。

山村:いえいえ、気仙イノベーションセンターまでお越しいただきまして、ありがとうございます。せっかくですので、地元の食材を食べながら、そして飲みながらでお話ししましょう。

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古森:それはいいですね!おや?あれは・・・ウマヅラハギですか。

山村:よくわかりますね。そうです、大船渡の魚市場で仕入れて来たウマヅラハギです。

古森:子供のころに釣りキチだったものですから、魚はけっこう詳しいんですよ。三陸は、ほんとうに魚が豊富ですよね。お魚好きには、天国のようです。山村さんがこちらに来られたのは、正確にはいつでしたかね。

山村:こちらに来始めたのは、2011年の8月末からですね。それまでコンサルティング会社、会社経営を経験して、震災発生時にはコーチングの会社にいたのですが、震災を機に何か公共の仕事をしたいなと思いまして。さるご縁で「環境未来都市構想」のプロジェクトに参画させていただくことになり、最初は月に2~3回のペースでこちらに訪問していました。

古森:環境未来都市構想。政府主導で、全国から都市・地域を選定して環境や超高齢化をテーマにした新しい経済成長モデルを作っていこうという、あのプロジェクトですね。

山村:そうです。気仙地域の3自治体(大船渡市、陸前高田市、住田町)がその一つに選定されています。2011年の12月に正式に選定されて、そこから忙しくなってきました。翌2012年に入ってからは、月の半分くらいをこちらで過ごす形でした。

古森:月に2~3回のペースから、月の半分を過ごすように。さすがに月の半分を過ごすと、かなり地元に近くなるでしょうね。

山村:そうですね。そこからさらに忙しくなりまして、2012年の4月からは思い切ってこちらへ引っ越してしまいました。もう、住民票も移してしまって、完全にこちらの住民になりました。

古森:気仙地域の人口が、1名増加したわけですね(笑)プロジェクトの中では、どのようなことを?

山村:大きく「環境」「高齢化」というテーマがある中で、私は特に「医療」分野について取り組んでいます。地域内のカルテ連携や医療・介護関係者間のネットワークづくりなど、色々と仕掛けているところです。

古森:順調に進んでいるようですね。 環境未来都市のプロジェクト全体で見た場合に、何かボトルネックのようなものはありますか。

山村:そうですね。計画する側と現地で実践する側との、認識ギャップのようなものが出てくると、物事が前に進まないなぁと実感しています。

古森:認識ギャップ?

山村:たとえば、東京で計画したものが、現地の実情にあっていない場合もあります。離れているから、当然そういうことも起こります。現地側では、「現地のことが分かっていない!」と反発しますね。ところが、それを真正面からフィードバックするということは、当地の人々のカルチャーではないのです。

古森:ああ、たしかにそういう面がありますね。人に対して何かネガティブなことを言うのを、ものすごく避けたり、非常に気を遣ったりするカルチャーがここにはあると感じます。

山村:古森さんもそう感じますか。

古森:はい。ボランティアで来た人が満足して帰っていくために、わざわざ仕事を作って喜んで見せて、気疲れしているような方々もおられたくらいです。「せっかくやってくれているのに、文句言っちゃ申し訳ない」ということで、言葉を飲み込んで我慢する人も多いですね。他所から来た人や遠方から協働する人にとっては、ポジティブなフィードバックは得やすいけれども、ネガティブなフィードバックはなかなか得られない土地柄です。「本当のところは、どうなんだろう?」と現地の人々の心中を想像する感度を高めておかないと、よそ者の立場ではPDCA(Plan-Do-Check-Action)による改善が難しいですね。

山村:おっしゃる通りです。計画側は計画側で、特にネガティブなフィードバックが来ない状態で物事が停滞していると、「良いプランを出しているのに、現地側が動いてくれない!」という苛立ちをつのらせることになります。本当は、プランに対してネガティブなものがあるから止まっているのに、そうだとは分からないのですね。双方に悪気はないのですが、こういう状態になると、お互いに「相手が動いてくれない」「相手が分かっていない」という他責のモードになってしまって、活動が停滞します。

古森:非常に難しい問題ですが、やはり健全なフィードバック関係がなければ協働作業は良い方向に進みませんね。双方に、少し行動を変えてみる勇気が必要だと思います。遠くにいる計画側の人々は、現地の実情に鋭敏になって、人々の心情などをリアルに想像できるように努力する。現地側では、はばかられることであっても、遠慮せずに反対意見を表明するように努力する。遠慮と不理解の壁を越えなければ、復興は遠いと思います。

 

2. 気仙地域に移り住んで

古森:さて、実際にこちらに住んでみて、どうですか。

山村:楽しくやっていますよ!私にとっては、初めての田舎暮らしですし。食事がとにかく美味しいですね。

古森:食事のクオリティは、私も毎月来るたびに感じ入るものがあります。色々と地元独自の調理法がありますし、素材そのものも本当に素晴らしいという印象です。

山村:私には以前から、「誰が作ったか分かるものだけで食卓を構成する」という夢があったのですよ。ところが、こちらに来てからというもの、早くもそれが実現してしまっている感があります。本当に、QOL (Quality of Living = 生活の質)が高いです。「みんな、来ればいいのに!」と思いますよ。

古森:同感です。私は引っ越すところまでは至っていませんが、この地域で巡り合う様々な素晴らしいものに感動しています。もっと多くの人に来ていただいて、随所にある「良さ」を知ってほしいなと思います。地元の人間関係などは、どうですか。

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山村:そうですね・・・。知り合いも増えてきましたし、親切な方々が多いですね。とれた野菜や魚を人と分け合うという行為が日常的ですし、とても暖かい感じがします。一方、まだ私自身が地元に受け入れられたという確かな感覚はつかめていません。

古森:引っ越してきても、そのあたりは少し時間がかかりますかね・・・。

山村:どうでしょうかね。一般的に、気仙地域に限らず日本の地方の町では、外から来た人々を積極的に受け入れるというモードではないのだと思います。時々訪問して来る分には良いのですが、いざ住むとなると、すぐに昔ながらの人間関係に入っていけるわけではないのです。

古森:私も田舎の出身ですから分かります。まあ、有機的な関係を積み重ねていくしかないのかもしれませんが、震災復興を機に、何かグッと開かれた感じになっていくといいですね。多くの人に来てもらって、すぐに溶け込めるような場所になっていけば、それが復興の土台にもなるんだと思います。

 

3. 地域経済のファンダメンタルズをつくりたい

古森:環境未来都市構想以外にも、いくつか新しい活動を始めておられますね。

山村:はい。環境未来都市構想は素晴らしい取り組みなのですが、突き詰めて考えると、医療・介護、環境などの分野でお金がまわる大前提として、経済のファンダメンタルズがしっかりしていなければなりません。医療・介護、環境などの分野だけで地域経済を活性化するのは難しいと思います。

古森:なるほど。それで、気仙地域の経済の底上げになるような何かを探しておられるのですね。

山村:色々と試行錯誤しているところです。住田町の野菜を、東京まで売りに行ったりもしました。魚も、漁業関係者との縁ができたので、東京のレストランなどに個別に声をかけて、テストマーケティング的なことをいくつかやっています。その延長線上で、「Fish 2.0」というビジネス・コンペティションにも参加するようになりました。

古森:「Fish 2.0」ですか。

山村:簡潔に言いますと、アメリカのパッカード財団が環境保全活動の一環として取り組んでいるもので、世界中からサステナブルな資源活用につながるビジネスのアイディアを募って表彰するものです。表彰されると、財団の応援を受けて、実際にプロジェクトとして推進していくことになります。

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古森:それはまた、大きな可能性をもった話ですね。そちらに応募されているのですか。

山村:そうなのです。魚の食べ方を紹介しつつ、都市部での消費者啓発と付加価値形成を目指したプロジェクトを提案しています。これまでの途中経過では、好感触を得ています。どうも海外の方々は日本の漁業に興味があるらしく、先日も国際会議に招待されました。私は英語が苦手なので、勉強しなければならず、困ってもいますが、世界とのつながりの中で、気仙地域の漁業の将来を作っていけたらいいなと思います。

古森:この地域は震災前から漁業が盛んな地域ですし、今後も復興の過程の中で漁業の再生・振興は重要なテーマになると思います。山村さんは、漁業における産業振興の課題をどのように見ておられますか。

山村:漁業には、大きく二つの課題があると思います。一つ目は、やはりもう少し高く売れるようにしなければなりませんね。美味しくても、市場価値が認められていないものが多々あります。他の魚と一緒に一匹だけ網にかかったアンコウですとか、そうしたちょこちょこ獲れる少量の魚の美味しい食べ方などを、もっと消費市場に対して啓蒙していく必要があります。

古森:それはまさに、「Fish 2.0」で山村さんたちが提案されている考え方につながるものですね。

山村:そうです。そして二つ目は、漁業のプレイヤー数と生産性の課題です。古森さん、過去30年で日本の漁獲高はおよそ3分の1に減っているのですが、漁師さんの数はどれくらい減ったかご存知ですか。

古森:いえ、分かりません。かなり減っているのは間違いないのだと思いますが。

山村:答えは2分の1です。漁獲高が3分の1、漁師さんの数が2分の1。つまり、漁師さん一人当たりの漁獲高が減る形で長年推移しているわけです。皆さんこだわりがあって漁業をしておられますし、それ自体は素晴らしいことです。しかし、全体の数の関係で言いますと、年々儲かりにくくなっていく構造にあるわけです。産業としての将来を考えると世代交代も進めなければなりませんが、儲かりにくい構造の中ではそれもなかなか進みません。

古森:一人当たりの生産性の課題と、市場における付加価値啓蒙の課題は、結局リンクしますよね。数量が減っても付加価値を認知される手があれば、生計は成り立っていくでしょうし。

山村:そうなのです。一人ひとりが付加価値をいかにして生み出すか、本気で考えて行くことが必要です。そもそも、漁業だけでは気仙地域全体の経済の底上げには足りませんので、漁業に限らず、皆が考えて行く必要があります。

 

4. 起業を促し、世界に開かれた町に

古森:これから山村さんの活動は、どんな形になっていくのでしょうか。

山村:この地域に起業家を増やしていくことが非常に重要だと思っていますので、何らかの形で、起業家支援をやっていきたいですね。特に、若い世代がちゃんと儲かる状況を作っていく必要があります。

古森:これから起業を促進していく上で、鍵となるのはどのような人たちですか。

山村:私は二つ重要なセグメントがあると思っています。一つは、高校生ですね。必ずしも皆が大学に行くという風土でもなく、潜在的には早い段階から起業という選択肢をとることのできる高校生が、それなりにいるはずです。

古森:なるほど、高校生ですか・・・。

山村:もう一つは、復興支援系の活動でこの地に来た方々の、助成金や予算の区切りがついた後のフェーズですね。せっかく土地勘を身につけ、地元に溶け込み始めた矢先ですから、「出来ればこの地に残って何かをしたい」という人は多いのではないでしょうか。そういう方々に、起業の機会を提供できたら良いなと思います。

古森:「Fish 2.0」など、海外とつながった形での活動も増えて行きますかね。

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山村:そのつもりです。「Fish 2.0」以外にも、例えば、WHOの「Age-Friendly Cities」(高齢者に優しい都市)のプログラムに手を挙げてみるという手もありますね。とにかく、国際的なネットワークに、東北被災地から入っていくということにチャレンジしていきます。

古森:世界に開かれた気仙地域になっていくといいですね。私が続けている「Komo’s英語音読会@陸前高田」も、同じような思いがベースにあります。1億2千万人の日本の中に閉じた復興を考えるのではなく、世界70億人との関係構築を視野に入れた構想や活動が重要だと思います。仕事って、人間同士の関係から生まれてくる部分がとても多いですから。世界とつながることができたら、世界との間に仕事が生まれていきます。

山村:日本国内・国外いずれからでも、もっと他所から人が来やすくなるような仕掛けを考えるべきですね。たとえば、「Web名誉市民」のようなものを作って、それを核にして色々な仕掛けを組んでいくことはできないでしょうか。「この町をどうしていくか」という視点で、皆で知恵を絞って取り組んでいきたいと思います。

古森:「Web名誉市民」ですか。面白いですね!そういうものがあったら、私も登録してみたいです。今は手続き面で不便な「ふるさと納税」の制度も、「Web名誉市民」なら簡便に出来るようになるとか・・・。そんな感じで、クリエイティブな新施策が出てくることを期待しております。

山村:しかも、今はまだ世界中がこの地域に注目をしています。震災から2年たって多少の風化はあるにしても、この被災地がどう立ち上がっていくのかということは、世界中の多くの人々が依然として関心を持って見ていますよ。だから、今はチャンスなのです!本当に経済的な面も含めた復興をやり遂げるつもりがあるのなら、このチャンスを生かさないと!

古森:震災という不幸な出来事は既に起きてしまったわけで、ここから先は、今ある「世界からの注目」という得難いチャンスを生かし切るべきですね。数年後になると、もうそのチャンスはないでしょう。今ならまだ、こちらから良いものを発信すれば世界中から反応があるでしょうし、人も来るでしょう。その触媒になっていこうとされている山村さんの活動に、敬意を表したいと思います。

そろそろお時間になりました。山村さん、本日はどうも有難うございました。

(End)

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